特捜検察vs.金融権力



フィナンシャルエンジニアリング―デリバティブ取引とリスク管理の総体系特捜検察vs.金融権力マンガ女のお金の超常識投資に勝つためのニュースの見方・読み方・活かし方最新版 オプション売買の実践はじめてのFX投資―「外国為替証拠金取引」の勝ち方・お金の稼ぎ方入門 マイクロファイナンス―世界を貧困から救う、新しいビジネスモデル株の短期売買実践ノート (同友館投資クラブ)投資信託&個人年金の対象別アプローチとセールストーク―預かり資産セールスに強くなる (預かり資産セールスに強くなる)投資の心理学―「損は切って利は伸ばせ」が実践できない理由


特捜検察vs.金融権力
特捜検察vs.金融権力

ジャンル:
セールスランク:41612 位
発送可能時期:通常24時間以内に発送
参考価格:¥ 1,470 (税込)

ご購入前のご注意
当ウェブサイトはAmazonウェブサービスにより実現されております。 商品の取引契約および商品に関する情報は全てAmazon.co.jpの取り扱いとなります。

購入する

特捜検察と大蔵省の意外な人脈

本書のキモは、タイトルにあるように、特捜検察と大蔵省との攻防にある。戦後日本の護送船団体制のど真ん中にあって、金融・財政政策をつかさどってきた巨大な行政権力・大蔵省。それに寄り添い、経済秩序維持と政官界腐敗に目を光らせてきた捜査権力・検察。この二つの国家権力が過去の密着関係を清算し敵対関係に入ったのが九八年の「大蔵汚職事件」だった。キーマンは以下の二人(肩書きはいずれも当時)。石川達紘・東京地検検事正――中央大出の現場のたたき上げ。「特捜検察のエース」として政官財界にその名は鳴り響く。杉井孝・大蔵省銀行局審議官――東大在学中に司法試験に一番で合格。同時に受けた国家公務員試験も上位合格、若くして「二〇〇二年の大蔵事務次官」といわれた超エリート。だが一方で、両者の意外な交遊ぶりを掘り起こし、臨場感をもって描いている。
 本書が単なる事実の羅列に終わらず、読者に最後まで一気に読ませるストーリー性をもたせているのは、長年司法記者として検察をウオッチしてきた著者の手柄だ。
金融事件に対する特捜部の取り組みを活写

バブル崩壊後、イトマン事件から長銀・日債銀破綻あたりまでの諸々の金融事件を中心に、それらの「事件化」の背後にある特捜検察と旧大蔵省(=金融権力)の動きを追う。以前から大蔵・国税当局から検察への情報提供が経済事件の端緒になったり、両者の協力により特捜部の捜査が進展してきたケースが多いこと、そしてそれらが大蔵官僚と検察・法務官僚との間の属人的なコミュニケーション・チャネルによって補強されてきたことがよく分かる。

検察首脳、法務官僚、特捜部と、それぞれの組織を検事という独立した法曹が担っているのは、前々から不思議な世界だと思っていたが、やはりそれぞれに考え方の違いがあったり組織の論理が働いたりするようだ。そこはジャーナリストの著作だけに人間ドラマとして面白い読み物になっている。しかし全体として何が問題意識になっているのか読みづらく、帯の宣伝文句にあるように「国家権力のハラワタをえぐり出す」というほど明快には整理がついていないと思う。
新しいものの見方を与える

「検察」VS「大蔵」の内幕、ということで、内幕を分かりやすく解説してくれる。是非、手に取って欲しい本。新しいものの見方が提示される。

但し、基調は、反権力(反為政者)である。出版物ということで、この本に、記述された情報も、ある種の選別と、操作がなされているようだ。それを承知で読めば、一級に近い情報源となりえる。
検察のチェックは誰がする?

バブル期から現在まで、時代を象徴する経済事件とその背後にある社会の歪みを検察の動きを中心に追ったドライブ感溢れるノンフィクション。
国の行政機関である検察が国の政策に沿って権限を行使すること、所謂「国策捜査」は極めて自然な刑事司法の姿である、という著者の姿勢は賛否の分かれるところだが、現に検察(及び表裏一体の法務官僚)が日本社会の転換点にあって常にその進む方向をリードしてきた事実は否定し得ない。中でも本書が扱う、「省庁の中の省庁」大蔵省が絶大な権限を振るった「護送船団」型の事前規制行政システムから、ライブドア事件に象徴される事後チェック型の行政システムへと大きく舵を切ったこの20年の「国のあり方」に検察が果たした役割は大きい。
一方で犯罪摘発を社会設計の手段として用いるというエリート主義は常に独善と紙一重だ。調査活動費問題では内部告発者の口封じ逮捕疑惑なども含め、検察の恥部が露になった。「天皇の認証官」として強烈なプライドを持つ彼らの仕事をチェックするはずの裁判署は「有罪率99.9%」という数字を挙げるまでもなく、検察の追認機関としてしか機能していないのが現実だ。
他にも、誰かが傷つくことを前提とした「事後チェック」なる仕組みが事前規制に比べてそれほど優れたものなのか、また「一罰百戒」を当然とする感覚は「法の下の平等」という大原則とどのように折り合いをつけているのか、など検察官らに問うてみたい疑問は尽きない。立場の違いを超え、様々な視点で考えさせられることの多い良書だ。

生き生きとした描写

 90年代以降の金融システムの変化の背景にあった事件について、検察当局と金融(・税務)当局との緊張関係を基軸にして描き出す。特に検察当局内部の勢力関係・統治のメカニズムから個々人の行動やその思いまでが生き生きと描かれる。事件の構成次第では、被疑者にも被害者にも成り得る恐ろしさ、それまでの原理・原則が通じない大きな変化の過程にあった時代の難しさ。マスコミに描かれる表面的な図式だけでは見えてこない現実、リアルなものがあることは、時間を経て、こうした形で表に現れてくる。現在は、本書の冒頭と最後に戯曲的に描かれるように、あらたな秩序の下に在るのかも知れない。その一方で、企業開示・監査、金融商品取引を巡る秩序の構築は、これからの課題として残されているのだと思う。
 ただし、小泉内閣以降、特に竹中大臣と金融当局幹部との関係については、あっさりとした記述に止まっており、その点に関しての若干の不満は残る。




朝日新聞社出版局
徴税権力―国税庁の研究
ドキュメント ゼロ金利 ー日銀vs政府 なぜ対立するのかー
漆うるはし 塗り物かたり―漆工芸の姿と装い
歪んだ正義―特捜検察の語られざる真相
市場検察