釣りと気象 (気象ブックス)



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釣り師が釣り師のために書いた実用書

「釣りと気象」を読み始めた直後、「梅雨前線上の低気圧が北東に進み始めると発達する傾向となり、風が強くなってくる」という文章が折からの梅雨の大荒れの天候を言い当てていることに気が付いた。気象庁の予報官を務めたこの本の著者によると、梅雨の天候変化にはこういう癖があるのだそうだ。著者の長久昌弘氏は徳島生まれの釣り師で、著者紹介によると趣味は「磯釣り他釣り一般。音楽(元徳島交響楽団理事)」となっている。さらりと書いてあるが、本の内容を読んだ感じでは、仕事である気象に関する知識はもちろんのこと、釣りの知識も生半可なものではなく、相当な釣り師であることがうかがえる。そういう人が書いた本だから、釣り場で起こるいろんなことと天候を結び付けて紹介する事例が非常に豊富で、釣りの世界で昔から言われている格言が具体的にはどのような現象を指すのかということがとてもわかりやすく書かれていたりして、ああそうだったのかと思わず相槌を打つことが多くあった。天気図の気圧配置がどういう風にかわったら、天気はこのように変化していくという、天気図の実例を豊富に使った解説は、まさにこの本の真骨頂である。ただし、決して難解な本ではないが、今どきの平均的な釣り師の好みに合わせて書かれた本ではなく、すべてを読み通すにはちょっと骨が折れるかもしれない。それでも、数ある類書の中でも内容はとても実質的でためになることばかりだから、自分の釣りのスキルを少しでもアップしたいと思う方なら、丸暗記するぐらいのつもりで読んでも役に立ちこそすれ、決して損することはないはずだ。



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