真実の姿を知る
ピンカートン探偵社、名前はよく知られているし、西部劇でも金庫破りなどのアウトローをしつこく追いまわす役で登場したりする。
また、FBIの前身であるという説もある。
しかし、その実態はあまり知られていない(少なくとも、ぼくは知らなかった)。
ピンカートン探偵社のはじまりから、アメリカ国内で力を得ていく過程を本書で知った。著者は特に労働争議の際に果たした役割にスポットを当てている。新鮮な驚きがあった。
敬愛する作家・矢作俊彦氏はプロフィールに「元ピンカートン探偵社日本支社」などとお書きになることがあったが、これはもちろんシャレである。実際にピンカートン探偵社に所属していた作家に、ダシール・ハメットがいる。
内容は面白いが・・・
推理小説好き(探偵小説好きと言ったほうが正確か?)にとっては、ドイルの「恐怖の谷」やハメットの「コンチネンタル・オプ」シリーズとともに「ピンカートン探偵社」の名前は不滅であろう。 そのピンカートン探偵社の発祥から栄枯盛衰を、ピンカートン社自身は決して語ることのないであろう裏の顔も含めて年代を追って記述した「真のピンカートン社史」とでも言うべき内容は実に興味深い。 内容は星5つとしたいのだが、他の評者もコメントされているとおり、この著者の文は接続詞の使い方が論理的でない部分もあって相当破綻しており、実に読みづらくわかりにくい。出版元にも責任の一端はあると思うが残念ながら星3つとした。
労働史家の異色のピンカートン伝
著者はアメリカの労働運動史を専門とする歴史家。モリー・マガイアズ事件やアメリカ・サンディカリズムの研究の途上で、ピンカートン探偵社に出会ったらしい。ピンカートン探偵社は労働運動の敵対者であるという立場から、同社の歴史をたどった異色作となっている。犯罪小説のヒーローとして、しばしばロマン的に語られがちなピンカートン像とは一線を画しており、価値がある。 19世紀後半〜20世紀初頭、ピンカートン探偵社の主要な業務は労働運動へのスパイやスト破りであった。彼らは資本家の手先であり、労働者の迫害に手を貸した。なぜピンカートンはこのような業務に手を出すことになったのか。そして、そこから撤退せざるを得なくなった理由は何か。警察やライバルの探偵社、FBIとの関連性をからめ、堂々と描き出されている。 労働運動史からピンカートンを描くというスタンスは面白いが、実際には探偵社の歴史を再構成するに留まってしまっている。また文章を書くのが苦手らしく、長い文章では何を言おうとしているのかわからなくなる。著者自身もそのことには気付いているようで、やたらと短文が多い。しかしそれもやはり読みにくい。
中央公論社
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