子供たちのモヤモヤした小冒険
豊かとは言えない街オタバリのすさんだ街路で展開する小冒険を淡々とした口調で綴った作品です。子供であるために生じる無力感と、戦争直後の脱力感の両方が、全編に暗い影を落としています。著者セシル・デイ・ルイスの達筆ではない語り口は悠長で、盗まれたお金を探し出し取り返すための出口の見えない混沌は、読み進めるのが辛いぐらいです。 そんな中、だんだんと希望が見え始め、頭のいい子供たちが警察を巻き込んで犯人逮捕に近づくという結末は、心の靄が徐々になくなっていくようで、すがすがしいものでした。 子供たちが意地を張り合ったり、逆に友達のために強がってみせたり、勇気を出したりする様子を読んでいると、こんな子供時代を過ごせたら面白かっただろうなぁ、と、憧れのようなものを感じます。 子供の頃に感じる無力さを上手に描いた、ほろ苦い冒険物語です。
岩波書店
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